よろいざかハイスクール

PC版は何故か読みにくいらしいっすよ。

今でも鮮明に覚えているカラオケの背景映像

 

誰でもカラオケに一度は行ったことはあるだろう。

 

家族とでもいい。友達とでも、恋人とでも、1人だけだったとしてもいい。

 

受付が終わったらドリンクバーでメロンソーダをコップに入れたり、曲をデンモクに入力したり、ノリノリでタンバリン叩いたり

 

粉雪歌ったり、Lemon歌ったり、チェリー歌ったり

 

そんでまたドリンクバーでメロンソーダを入れたりして、

 

時間が経ったら店を出る。

 

結果としてカラオケは楽しかったという感情が残る。

 

これならいい。

 

楽しかったという感情"だけが"残ったらいい。

 

 

カラオケで恐怖を覚えたりすることなどまず無いだろう。

 

 

カラオケで恐怖を覚えるなど........

 

 

 

....あれは12年前の話になる。当時7歳。

 

祖母の家の近くにカラオケ屋が出来た。

 

母が何かしらの理由で数時間の間だけ俺と兄を祖母の家に預けた。

 

祖母の家には遊べるようなものは何も無く、テレビも時間帯的に子供にはつまらないものしか放送されていなかった。どうしたものか.....

 

「カラオケにいきたい」

兄が突然口に出した。

 

「いいよ」

祖母の返事は早かった。

 

カラオケ屋は徒歩1分で着く場所にあったので兄は提案した2分後には願いが叶っていた。

 

3人でカラオケボックスに入る。

 

デンモクとマイクとモニター。

 

兄がさっそくデンモクに曲を入力し始めた。

ほとんどがアニソンだった。

と言ってもポケモンドラえもんなど教育的に大丈夫な曲しか入れなかった。

小学校低学年が知っている曲なんて限られてくるから仕方がない。

ましてや小1の俺なんか何を歌っていいかさらに分からない。

 

「鎧坂、何歌う?」

 

「えっと.....ドラえもんのやつ」

 

ドラえもんね〜。ばぁちゃんは?」

 

「聞くだけでいい。」

 

「へ〜」

 

祖母は孫のために気を遣ってくれていたのだろう。

俺はモニターを見ながらケロロ軍曹のOPを歌う兄の声を聞いていた。

 

モニターにはそれと言って特徴のないCGのカエルの映像が映し出されていた。

 

(ドラえもんだったらどんな映像になるのかな...ロボットかな...?)

 

こんなおっとりしたことを考えていたのを覚えている。

 

この後一生忘れることのない背景映像が流れるのを知らずに...

 

「鎧坂、ドラえもんだよ〜」

 

マイクを渡された。

 

 

ドラえもんのうた』(大杉久美子)

 

テレレレレレレレレレレレレレレレレレレ♪

テレレレレレレレレレレレレレレレレレレ♪

チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪チャカチャ♪

テレレレレレレレレレレレレレレレレレレン♪

ズンチャズチャチャチャ♪

 

 

「あんなこ......................と.....」

 

 

映し出されていたのは、大量のゲル状の何かから逃げる男の映像だった。

 

 

ニュースで事件などが起きた時に報道される再現CGを思い浮かべて欲しい。

青くて顔のないマネキンみたいな人間。

 

あれが

 

あれが暗い暗いダンジョンの中で大量のゲルに襲われているのだ。

 

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CG男はダンジョンの中を駆け回る。

あっちに行ったりまっすぐ行ったり。

それでもゲルは男を追うのをやめない。

3方向からゲルが押し迫ってきていた。

それでも男はゲルから逃げるのをやめない。

 

男は駆け回る。それをゲルが追う。

 

 

7歳の俺は声が出せなくなった。

理解が出来なかった。

 

「鎧坂?どしたん?」

 

「あ........2番わかんなくなっちゃった」

 

「へ〜、んじゃ代わりに歌うわ」

 

歌っている兄の声が聞こえなかった。

ひたすら男はゲルから逃げていた。

最後はどうなるんだ...

 

 

「アンアンアン♪とっても大好き♪

ドラえ〜もん〜〜〜♪」

 

 

CG男は追い詰められていた...

うしろは行き止まり、目の前のゲルはダンジョンの天井につくぐらい敷き詰められていた。

 

じわりじわりとゲルが動く。触れたら死ぬ。

どうなるんだ....?

 

「アンアンアン♪とっても大好き♪

ドラえ〜もん〜〜〜♪」

 

ゲルが........止まった.... 急に死んだ....

 

あと1mゲルが動いていたらCG男は死んでいただろう。

 

 

最後に男は後ろを振り返る。

そこにはCGの滝が映し出されていた。

 

 

「ふ〜!」

ドラえもんのうたが終わった..........

 

 

この後のことは全く覚えていない。

この背景映像は一体なんだったんだろう...

 

男はなぜ追われていたのか、ゲルはなんなのか、最後の滝はなんなのか......

 

サロンパスのCMを見るたびにこの記憶が蘇る。

 

背景映像で検索しても見つからないのは分かっている。

なんなら背景映像は記憶に残らないような映像を作るように意識しているらしい。

 

あれは本当になんだったのか。

 

12年経った今、この話が通じる人がいるのだろうか....

 

 

 

「あのさ。」

 

「何?」

 

「昔、ばぁちゃんに一回だけカラオケ連れて行ってもらったことあったじゃん。」

 

「....?.......あぁ!なんかあったね。」

 

「その時...ドラえもん歌ったの覚えてる...?」

 

「..................」

 

 

 

 

 

「ポリゴンの人......」

 

いるんかい。